「体づくりに必要な食事」でも述べたようにカロリー計算は、筋肥大や減量(ダイエット)などの目的を達成するためにもとても重要になります。体づくりを行う場合には、摂取カロリーの計算と消費カロリーの計算を行う必要がありますが、ここでは、消費カロリー計算方法について詳しく記載します。最初は細かな計算をすることを面倒に感じるかもしれませんが、ざっくりとでも良いので少しずつ習慣づけていきましょう。
総消費カロリーについて
消費カロリー量は、トレーニング時だけでなく普段の生活からも積算することが必要です。基礎代謝量と活動レベルや、通常活動・トレーニングの活動に必要なカロリーである活動カロリー量から、一日の総消費カロリー量を算出しましょう。算出方法には様々な方法がありますが、ここでは、2つ紹介します。基礎代謝量に身体活動レベルを掛け合わせ算出する方法と基礎代謝に個別に積算した活動カロリー量を足し込み、算出する方法です。ダイエット初心者の方や逐一の計算にハードル高く感じる方は、前述の方法で問題ないでしょう。
方法1:総消費カロリー=基礎代謝量 × 身体活動レベル
方法2:総消費カロリー=基礎代謝量+総活動カロリー
基礎代謝量
基礎代謝とは、体をまったく動かさずに横たわっていても、呼吸や心臓を動かすなど、生命活動を維持するために最低限必要なカロリーのことをいいます。算出については、多くの方法があり、その中には体脂肪率が分からなければならないものや複雑な式のものがあります。
厚生労働省のホームページ上の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書」では、基礎代謝量が算出できる表が掲載されています。(下表参照)対象年齢の基礎代謝基準値に自身の体重を掛け合わせて算出してみましょう。ex)年齢20歳で体重70kgの場合、23.7×70=1659kcal
また、自動で計算してくれるサイトも多くありますので、そこで自身の基礎代謝量を算出し、把握するのも良いでしょう。厳密な基礎代謝量測定には、かなりの機器等を要するため通常はこれらの式を用いて問題ないでしょう。
採用する計算方法によって100kcal前後変わってきますが、自身の総消費エネルギーの概要を把握するという意味ではどれを採用しても問題はないかと思われます。ただ、アスリートのような脂肪が少なく筋肉量が多い方にはハリス・ベネディクト方程式は適合しない部分もありますので、キャッチ・マカドールの式での算出をおすすめします。
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||
年齢(歳) | 基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) | 参照体重 (kg) | 基礎代謝量 (kcal/日) | 基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) | 参照体重 (kg) | 基礎代謝量 (kcal/日) |
1〜2 | 61.0 | 11.5 | 700 | 59.7 | 11.0 | 660 |
3〜5 | 54.8 | 16.5 | 900 | 52.2 | 16.1 | 840 |
6〜7 | 44.3 | 22.2 | 980 | 41.9 | 21.9 | 920 |
8〜9 | 40.8 | 28.0 | 1,140 | 38.3 | 27.4 | 1,050 |
10〜11 | 37.4 | 35.6 | 1,330 | 34.8 | 36.3 | 1,260 |
12〜14 | 31.0 | 49.0 | 1,520 | 29.6 | 47.5 | 1,410 |
15〜17 | 27.0 | 59.7 | 1,610 | 25.3 | 51.9 | 1,310 |
18〜29 | 23.7 | 64.5 | 1,530 | 22.1 | 50.3 | 1,110 |
30〜49 | 22.5 | 68.1 | 1,530 | 21.9 | 53.0 | 1,160 |
50〜64 | 21.8 | 68.0 | 1,480 | 20.7 | 53.8 | 1,110 |
65〜74 | 21.6 | 65.0 | 1,400 | 20.7 | 52.1 | 1,080 |
75 以上 | 21.5 | 59.6 | 1,280 | 20.7 | 48.8 | 1,010 |
※算出式のうち一般的なものを下記参考サイトや計算フォーム(筆者作成)にて使用できます。
参考サイト
keisan 生活や実務に役立つ計算サイト:ホーム> 健康の計算>健康診断>基礎代謝量
※ハリス・ベネディクト方程式(改良版)による算出
計算サイト:トップページ>健康の計算>体重と体脂肪率から基礎代謝量の計算
※キャッチ・マカードルの式(体脂肪率を用いる算出方法)
国立健康・栄養研究所HP:健康・栄養フォーラム – 基礎代謝量の推定
※2000年以降に国立健康・栄養研究所で測定された日本人のデータに基づき、 国立健康・栄養研究所が新たに開発したもの。
計算フォーム
厚生労働省HP「日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書」72ページ表4中に記載されている国立健康・栄養研究所 の式(Ganpule の式)を元に筆者作成(2023.5.26参照)(下記3項目を入力し、計算ボタンをクリックまたはEnterキーを押すと、基礎代謝量が算出されます。)
※推定式は、18歳〜79歳の間で妥当性が確認されています。
国立健康・栄養研究所の式(Ganpuleの式)男性用
国立健康・栄養研究所の式(Ganpuleの式)女性用
身体活動レベル
身体活動レベルとは日常生活での活動の強度を示した1.35から2.00の値です。年齢と活動レベル別に数値化されており、それらを基礎代謝量に掛け合わせることで、総消費カロリーを算出します。
身体活動レベルは、以下の表のとおりです。厚生労働省のホームページでも公開されているので参考にしてみてください。なお、活動レベルⅠ、Ⅱ、Ⅲの定義は以下になります。
- Ⅰ:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
- Ⅱ:座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接 客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合
- Ⅲ:移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(ふつう) | Ⅲ(高い) |
1 ~ 2 (歳) | ─ | 1.35 | ─ |
3 ~ 5 (歳) | ─ | 1.45 | ─ |
6 ~ 7 (歳) | 1.35 | 1.55 | 1.75 |
8 ~ 9 (歳) | 1.40 | 1.60 | 1.80 |
10~11(歳) | 1.45 | 1.65 | 1.85 |
12~14(歳) | 1.50 | 1.70 | 1.90 |
15~17(歳) | 1.55 | 1.75 | 1.95 |
18~29(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30~49(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50~64(歳) | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
65~74(歳) | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
75 以上(歳) | 1.40 | 1.65 | ─ |
「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 より筆者作図(2023.5.26 参照)
活動カロリー(消費カロリー)
人は仕事や運動等で動かす時にそれに必要なエネルギーを消費しますが、ここではその時のエネルギー量のことを指します。主に、活動カロリー(消費カロリー)量は運動強度を示すメッツ(METs)という単位を用いて算出します。デスクワークやウォーキングなどそれぞれの運動に値が振り分けられており、それらを用いて、個別に算出します。なお、この式で算出されるエネルギーは、活動のみによるエネルギー+安静時代謝量の合計になります。このため、対象活動のみのエネルギー消費量を求めたい時は対象のMETs値から1を引いた値を用い算出します。
算出式:消費カロリー(活動カロリー)(kcal)=(METs)×体重(kg)×時間
METsの値の定義は、国立健康・栄養研究所HPの以下リンクを参照してください。
改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』
日常生活時や主な運動について抽出したものを下表に記載しておきます。(たくさんの数値があるのでぜひ一度上部リンクを参照してみてください。)
メッツ METS | 大項目 MAJORHEADING | 個別活動 SPECIFIC ACTIVITIES |
6.0 | コンディショニング運動 (conditioning exercise) | レジスタンストレーニング(ウェイトリフティング、フリーウェイト、マシーンの使用)、パワーリフ ティング、ボディービルディング、きつい労力 (resistance training (weight lifting, free weight, nautilus or universal), power lifting or body building, vigorous effort (Taylor Code 210)) |
5.0 | コンディショニング運動 (conditioning exercise) | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:スクワット、ゆっくりあるいは瞬発的な努力で (resistance (weight) training, squats , slow or explosive effort) |
3.5 | コンディショニング運動 (conditioning exercise) | レジスタンス(ウェイト)トレーニング:複合的エクササイズ、様々な種類のレジスタンストレーニングを 8-15回繰り返す (resistance (weight) training, multiple exercises, 8-15 repetitions at varied resistance) |
1.3 | 多方面にわたる活動 (miscellaneous) | 座位:読書、本、新聞など (sitting, reading, book, newspaper, etc.) 座位:書く、デスクワーク、タイピング (sitting, writing, desk work, typing) |
1.8 | 多方面にわたる活動 (miscellaneous) | 立位:会話をする、電話をする、コンピュータまたはテキストメッセージを送る、楽な労力 (standing, talking in person, on the phone, computer, or text messaging, light effort) |
1.5 | 多方面にわたる活動 (miscellaneous) | 座位:会話をする、電話をする、コンピュータまたはテキストメッセージを送る、楽な労力 (sitting, talking in person, on the phone, computer, or text messaging, light effort) |
4.0 | 職業 (occupation) | 建築作業:屋外、改築、新築(例:屋根の修理、その他) (construction, outside, remodeling, new structures (e.g., roof repair, miscellaneous)) |
3.3 | 職業 (occupation) | 電気関係の仕事(例:配線工事をする、ケーブルの取り付けや接合) (electrical work (e.g., hook up wire, tapping-splicing)) |
2.8 | 職業 (occupation) | 肉体労働や単純労働:全般、楽な労力 (manual or unskilled labor, general, light effort) |
1.5 | 職業 (occupation) | 座位作業:楽な労力(例:オフィスワーク、化学実験、パソコン作業、簡単な組み立て作業、時計の修 理、読書、デスクワーク) (sitting tasks, light effort (e.g., office work, chemistry lab work, computer work, light assembly repair, watch repair, reading, desk work)) 座位での打合せ:楽な労力、全般、談話を含む(例:食事をしながらの打合せ) (sitting meetings, light effort, general, and/or with talking involved (e.g., eating at a business meeting)) |
3.5 | 職業 (occupation) | 仕事中の歩行:4.8km/時、オフィス内、ほどほどの速さ、何も持たずに (walking on job, 3.0 mph, in office, moderate speed, not carrying anything) |
6.0 | ランニング (running) | ジョギングと歩行の組み合わせ(ジョギングは10分未満) (jog/walk combination (jogging component of less than 10 minutes) (Taylor Code 180)) |
7.0 | ランニング (running) | ジョギング:全般 (jogging, general) |
15.0 | ランニング (running) | ランニング:階段を上がる (running, stairs, up) |
算出方法
方法1 上記の基礎代謝量と身体活動レベルを掛け合わせます。
※17歳までの小児については、これにエネルギー蓄積量(組織合成に要するエネルギーと組織増加分のエネルギー)を加算する必要がありますが、ここでは割愛します。
例)年齢が20歳、体重が70kg、日常の活動レベルがⅢの場合
基礎代謝量:23.7(厚生省HPの基礎代謝基準値より)×70kg(体重)=1659kcal
総消費カロリー:1659(基礎代謝量)×2.0(活動レベル)=3318kcal
この3318kcalが一日の総消費カロリーということになります。
方法2 基礎代謝量を算出し、それに他で算出した総活動カロリー量を加算します。
※厳密にいうと、これに食事摂取に伴う体熱産生の量(食事誘発性体熱産生)を合算する必要がありますが、かなり複雑になるためここでは割愛します。体勢に影響はないと考えられます。
例)年齢が20歳、体重が70kg、睡眠を約8時間取り、顔を洗ったり、歯を磨くなど朝の準備に1時間、デスクワークを8時間行い、勉強を1時間、読書を仕事後1時間、筋トレを1時間して、テレビを1時間見て、入浴に30分、食事に朝昼晩合計1時間、皿洗いに30分、通勤は、往復1時間の自転車通勤という時間の使い方をしたとします。
前述の通り、消費カロリー(活動カロリー)は、(METs)×体重(kg)×時間で算出できるので、まず、総Mets量(METs×時間の総和)を算出します。その値に体重をかけ合わせるとわかりやすいかと思います。
総METs量=(8時間×1METs(睡眠))+1時間×2METs(身支度)+8時間×1.5METs(デスクワーク)+1時間×1.3METs(座位:勉強)+1時間×1.3METs(座位:読書)+1時間×6.0METs(コンディショニング運動、フリーウエイト)+1時間×1.3METs(テレビを見る)+0.5時間×1.5METs(入浴)+1時間×1.5METs(食事)+0.5時間×1.8METs(皿洗い)+1時間×6.8METs(自転車、通勤)=41.85METs
ここから基礎代謝量と被らない部分のみの活動カロリーを算出するため、それぞれの項目から1METsを引くことで、一度活動時のみのMETs値に変更します。
41.85METs-24METs=17.85METs
この引いた1METsの値(一日換算で24METs(1METsが24時間))は、安静座位時の値になりますので、この分は加算してやる必要がありますが、基礎代謝量と被らない部分だけ足すことになります。1を丸々足し込んでしまうと被る部分がでてしまいます。研究により、基礎代謝量の10パーセント分が安静座位時の消費カロリーになることがわかっているため、その分の値を再度足しこみます。
17.85METs×70kg=1249.5kcal(活動のみの総カロリー)+(1659(一日分(24時間分)の基礎代謝量)×0.1kcal(安静時の基礎代謝量と被らない部分の消費カロリー))
=1415.4Kcal
これが、基礎代謝量を除く活動エネルギー量になりますので、これに基礎代謝量を足します。
1659+1415.4=3074.4Kcal
これが総消費カロリーになります。
なお、10分間、対象のメッツの運動をしたときにどれほどのカロリーが消費されるかの早見表が国立健康・栄養研究所のHPにありますので、参考にしてみてください。(改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 国立健康・栄養研究所※活動のみの消費カロリーを知りたい場合は、3ページ目からの(安静時代謝量除く)を参考ください。)
補足
基礎代謝量を用いず、総消費カロリーを算出する方法もあります、が具体的な利用可能性は不明なことからここでは省略します。
参考:日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
(70、71ページ 3─2─1 推定式に基礎代謝を用いない方法)
まとめ
以上、消費カロリーの計算方法になります。細かな計算等が必要になる場合もありますが、初めのうちは自動計算してくれるサイト等で算出するものいいでしょう。大切なことは、概算でもいいのでカロリーを把握し、自分の現状を知ることです。また、上記方法で算出されるあくまで計算上のものであり、消費カロリーは、その日の体調や環境など様々な要因により上下しますので、摂取カロリーと比較し、自分でどれくらいのカロリーを摂取したら、どのような変化が体に起こるか注意していくことも体づくりを行う上でのポイントです。
体づくりに必要な食事のページでも記載しているように、基本的に摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば、体重が増加し、逆に下回れば、減少します。体重の変化はエネルギー要因以外にも影響されるため、あくまでエネルギー出納の結果を示すものの一つであり、エネルギー消費量、必要量を示すものではありませんが、イメージとしては、体重の変化を元に一日の消費カロリーを把握していくイメージで問題ないかと考えられます。
なお食事を考える際には、タンパク質や脂質、炭水化物のバランス(PFCバランス)やビタミンも重要になります。ただ、大前提の基本的な考えとして、カロリーを意識することは非常に大切です。最初は、厳密にカロリー計算、算出をすることはなかなか難しいので、簡単なところから始めてみましょう。
出典・参考リンク等
・国立健康・栄養研究所ホームページ
・改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』(国立健康・栄養研究所ホームページ内)
・厚生労働省HP:e-ヘルスネット > 身体活動・運動 > エネルギー代謝の仕組み > 身体活動とエネルギー代謝
・厚生労働省HP:エネルギーワーキンググループ
・厚生労働省HP:運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書
・日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
この記事を書いた人
※運営者情報
名前:uki
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