PFCバランスとは、1日の摂取カロリー中のタンパク質、脂質、炭水化物、それぞれが占める割合のことを指します。
P=Protein=タンパク質
F=Fat=脂質
C=Carbohydrate=炭水化物
タンパク質、脂質、炭水化物それぞれに目標や推奨とされる摂取量が「日本人の食事摂取基準2020版」策定委員会報告書でその目的と合わせて示されています。ビタミンやミネラルももちろん重要になりますが、ここでは、PFCバランスにフォーカスし、記述していきます。筋肥大や減量(ダイエット)のように体づくりを行う場合、大前提として消費カロリーや摂取カロリーなどのエネルギーについて考えることは基本にありますが、このタンパク質、脂質、炭水化物のバランス=PFCバランスも考慮して食事を摂る必要があります。適切なバランスでエネルギーを摂取することで、効率的に体づくりの目標を達成しましょう。
指標について
まず、日本人の食事摂取基準2020で示される各指標の定義について、解説します。以下のように示されています。
<目的> | <指標> |
摂取不足の回避 | 推定平均必要量、推奨量 *これらを推定できない場合の 代替指標:目安量 |
過剰摂取による健康障害の回避 | 耐容上限量 |
生活習慣病の発症予防 | 目標量 |
目標量については、生活習慣病の発症予防を目的とする場合に用いられます。ここでいう生活習慣病とは、高血圧症・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病のことです。生活習慣病等にならないことを目指す場合はこの指標を参考にしても良いでしょう。ただし、生活習慣病には食事だけでなく、様々な要因があるためこの量が常に適切な値とは限りませんし、この量を守っていても生活習慣病を完全に防げるというわけでもありません。
筋肥大や減量(ダイエット)を行う場合、すなわち生活習慣病にならない健康な体を目指す場合にもこの値を参考にするのも方法の一つです。ただし、本来の目的に100%合致する値とは断言できないため、日々の体の変化に敏感になり、この値を基本に自分の目的に合ったPFCバランスを探していくことがとても大切です。
推奨量については、栄養素の摂取不足の評価に対して用いるものであり、少なくともこの値の量を摂取するように心がけましょう。また、通常の健康体の方で体型維持等を目指す方は、推奨量に達する食事が取れている場合は、それを継続して問題ないかと思われます。また、推奨量に関しては、タンパク質、脂質、炭水化物のなかでタンパク質しか設定されていません。
タンパク質について
タンパク質の目標量は、その範囲を指定する形で定められています。上限は健康上等への影響から摂取カロリー量の20%とされています。摂取カロリーの計算や算出については、カロリーについて(摂取カロリー)を参照ください。
推奨量については、下表を参照ください。不足を回避する目的で設定されており、摂取の下限として用いるのが良いでしょう。この量を摂取できている方で、現状を維持したい方はそれを継続していく形で問題ないでしょう。
たんぱく質の摂取推奨量
性別 | 男性 | 女性 |
年齢等 | 推奨量 | 推奨量 |
0 ~ 5 (月) | - | - |
6 ~ 8 (月) | - | - |
9 ~11(月) | - | - |
1 ~ 2 (歳) | 20 | 20 |
3 ~ 5 (歳) | 25 | 25 |
6 ~ 7 (歳) | 30 | 30 |
8 ~ 9 (歳) | 40 | 40 |
10~11(歳) | 45 | 50 |
12~14(歳) | 60 | 55 |
15~17(歳) | 65 | 55 |
18~29(歳) | 65 | 50 |
30~49(歳) | 65 | 50 |
50~64(歳) | 65 | 50 |
65~74(歳)2 | 60 | 50 |
75 以上(歳)2 | 60 | 50 |
妊婦 (付加量) | ||
初期 | +0 | |
中期 | +5 | |
後期 | +25 | |
授乳婦(付加量) | +20 |
※日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書より抜粋、筆者加工作成(2023.6.10 参照)
脂質について
脂質についても、日本人の食事摂取基準において、その目標量が示されています。脂質はその内容をn─3系脂肪酸、n─6系脂肪酸などさまざまなものに分けられ、それぞれ摂取目標や目安が存在します。
ここでは1番の大項目である脂質の摂取目標量について、記述します。タンパク質と同様に摂取エネルギーに含む割合、エネルギー%で示されています。1歳以上対象に、摂取エネルギーの20%から30%が目標量として定められています。また、脂肪には前述しているように必須脂肪酸にはn─3系脂肪酸、n─6系脂肪酸などさまざまな種類が存在するので、健康上への観点からそれらのバランスや脂肪の質も考えて摂取するように気をつけなければなりません。
炭水化物について
炭水化物は、主に糖質と食物繊維に分けられます。炭水化物においては、目安量や必要量という確定的な数値は定義づけられていませんが、エネルギー源として非常に重要になるため、タンパク質と脂質の合計の残りの部分のエネルギーを賄う量として目標が設定されています。目標目安としては、55%〜65%エネルギーが好まれます。ただし、食物繊維の摂取量も確保するなどその質も非常に重要になります。
PFCバランス
下表が上記3つの栄養素のバランス、すなわちPFCバランスについて、まとめた表になります。あくまで生活習慣病の発症予防を目的とした基本的なPFCバランスです。体型維持や健康維持を目指す場合には、この値を参考にして食事をとりましょう。タンパク質については、推奨量も示されているため、不足することを避けたい場合には、その値を下限とした食事を摂るようにしても良いでしょう。
筋肥大を目指す場合や減量する(ダイエット)場合には、この表を基本にさらにタンパク質を多めに設定したり、脂質を減らしたりして、バランスを工夫し、体重の変化や体調の変化、体つきの変化によりその時々の自分に最適なバランスを模索していきましょう。また、摂取カロリーや消費カロリーなどのエネルギーに関しても留意していくことが必要です。
エネルギー産生栄養素バランス(% エネルギー)
性 別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢等 | 目標量 1,2 | 目標量 1,2 | ||||||
たんぱく質 3 | 脂質 4 | 炭水化物 5, 6 | たんぱく質 3 | 脂質 4 | 炭水化物 5, 6 | |||
脂質 | 飽和 脂肪酸 | 脂質 | 飽和 脂肪酸 | |||||
0 ~11(月) | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ | ─ |
1 ~ 2 (歳) | 13~20 | 20~30 | ─ | 50~65 | 13~20 | 20~30 | ─ | 50~65 |
3 ~ 5 (歳) | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 |
6 ~ 7 (歳) | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 |
8 ~ 9 (歳) | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 |
10~11(歳) | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 |
12~14(歳) | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 10 以下 | 50~65 |
15~17(歳) | 13~20 | 20~30 | 8以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 8以下 | 50~65 |
18~29(歳) | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
30~49(歳) | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
50~64(歳) | 14~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | 14~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
65~74(歳) | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
75 以上(歳) | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
妊婦 初期 | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | ||||
中期 | 13~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | ||||
後期 | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 | ||||
授乳婦 | 15~20 | 20~30 | 7以下 | 50~65 |
2 範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。
3 65 歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が
参照体位に比べて小さい者や、特に 75 歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
4 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。
5 アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
6 食物繊維の目標量を十分に注意すること。
※日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書より抜粋、筆者加工作成(2023.6.10 参照)
算出について
次に、上記表に当てはまるPFCバランスでそれぞれ、タンパク質、脂質、炭水化物をどれくらい摂取すれば良いか算出する方法を記載します。
まず、体づくりの目的に合わせ、摂取するべきカロリー量を算出します。体重、体格を維持したい場合には、基本的に消費カロリーと同じ量だけとる必要があります。消費カロリーの算出については、こちらのページをご覧ください。
身長170cm、体重70kg、年齢20歳の男性、日常の活動レベルがⅡで、特に筋肥大や減量(ダイエット)を目指した体づくりを行わない場合(体重・体型維持、健康維持の場合)
1日の消費カロリーは、およそ2900kcalになります。これを上記表の通りの割合(バランス)で、P(タンパク質)、F(脂質)、C(炭水化物)それぞれのカロリーを算出します。
(※ここでは、タンパク質、脂質については、範囲上限の値を用い、炭水化物については、残りのエネルギー%を用います)
P=2900×0.2=580kcal
F=2900×0.3=870kcal
C=2900×0.5=1450kcal
次に、カロリーからそれぞれのグラム数を算出します。
タンパク質 1g当たり 4kcal
脂質 1g当たり 9kcal
炭水化物 1g当たり 4kcal
参考:カロリー計算について(摂取カロリー)
P=580kcal÷4=145g
F=870kcal÷9=96.7g
C=1450kcal÷4=362.5g
これら上記のグラムに合わせて、3食を考えていきます。単純計算で、タンパク質については、一食あたり48.3g、脂質については、32.2g、炭水化物は120.8gを摂取します。(※上限の値で算出しているため、タンパク質、脂質について比較的多い量が出ていることに注意)この摂取量については、基本的には、一日のトータルで考えて問題ないため、一食で摂取することが厳しい場合には、補食(メインとなる3食以外の食事、間食)を活用しても良いでしょう。
補足
PFCバランスはもとより、体づくりをする上の観点として、カロリーの観念は大事になります。カロリーとして、タンパク質、脂質、炭水化物の種類を変えたとしても、総エネルギー量が変わらない場合は、減量、増量等の効果は期待できないと考えられます。また、ここでは記述していませんが、ビタミンやミネラルについても体づくりを行う上では考慮していく必要があります。
まとめ
以上、PFCバランスについて記載しましたが、厳密に言えば、目的や個人の状況に合わせ、その適切なバランスは変わってきます。今回記述したものは、生活習慣病を予防する目的で、使用が推奨されるバランスです。初めは、これを基本に自身の体の変化や体調の変化を見て、自分の目的に一番あった食事のPFCバランスを考えていきましょう。また、上記において、バランスは1日単位で考えると書きましたが、はじめのうちは一週間単位など長い期間で考えてもいいでしょう。摂取量についても、細かいグラムではなく、タンパク質、脂質、炭水化物を2:3:5の割合で摂取するという意識を持つだけでも大丈夫です。少しでも、食事のバランスに気をつけ、体づくりの意識を養っていきましょう。
この記事を書いた人
※運営者情報
名前:uki
経歴:スポーツ歴20年以上、筋トレ歴10年、海外でのスポーツ指導
趣味:筋トレ、水泳、柔道、サウナ、ハイキング、ドライブ
取得資格:中高保健体育免許
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